トレーニング終わりに買った月刊アイドル君を読み終えたハマーは、なんとなく後悔していた。グラビア以外のページがなんだか薄っぺらかったのだ。月刊HIPHOPの方が、いや、でもグラビアは良かった。それはもう良かった。でもヒップホップの方も疎かにしてはならない。妙に冷えた頭でハマーは考えた。
そうだ、睡眠学習だ。ウォークマンでヒップホップを聴きながら眠れば上達すること間違いなしなのだ。ダウンジャケットのポケットを探る。目当てのものがないのでもう片方も探る。ウォークマンとイヤホンが無い。
目を閉じて思い返すと、トレーニングから帰ってきた後、夕飯の匂いに誘われて下の玄関から入った。2人と一緒にご飯を食べて、座る時モゴモゴするのでポケットからウォークマンを出した。その時だ。2人はもう寝ているだろうか。こっそり降りて探せばいいか、
そう思って足元の天井板を外すと、ジャガーと目が合った。
「……なんだよ」
屋根裏から漏れ出た光が2人が横たわる布団を照らす。そう、2人。
「え、なんで一緒に寝てるでごさるか……?」
「…………」
横向きが少しうつ伏せに崩れたような姿勢のピヨ彦に、ジャガーが後ろから寄り添うように寝ている。
「寒くなってきたから」
「もう四月も後半だYO」
「うるせーな、ピヨ彦が起きるだろ」
「さっき起きてなかった?」
「寝てるよ」
いや、確かにハマーは見た。一瞬こちらを見たピヨ彦の目とびくりと震えた肩を。今は顔を枕に伏せているが、寝たふりな気がする。怪訝そうな顔をしたハマーにジャガーが言った。
「用がないなら閉めて。帰って」
「あっ、あの、ちょっと下降りていい?」
「ダメ」
「え〜……。夜ご飯食べた時に、拙者ウォークマン置き忘れちゃったみたいで、取ってもらっていい?」
「やだ」
「あ、それ! その机の上に置いてあるやつ! それ取ってYO」
「マジで無理」
「なんでだYO」
「明日取りに来い。今日はもう二度とそこ開けんな、早く閉めろ」
取りつく島もない。今日はもう難しいだろうと思ってハマーはゆっくりと天井板を閉めた。
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「ピヨ彦、」
耳元で名前を呼ぶと、ギュッと閉じた目が開く。
「お前さあ、締めんなよ、オレめちゃくちゃ我慢したよ」
ふうう、というピヨ彦のため息が枕に吸い込まれていく。
「……なんか、イッちゃった」
「ちんぽ扱いてないのに?」
ジャガーが布団を捲ると、シーツの上に白濁のシミができている。覗き込む時にまた陰茎を押し込んでしまったようで、ピヨ彦が小さく「あっ」と鳴くのと合わせて精液がとろりと流れ出た。
「これがトコロテンかあ、エロいな〜ピヨ彦……」
前立腺のすこし奥、精嚢を裏から刺激してしまっていたのだろう。精液を掬い取って先端をにゅるにゅると扱くとピヨ彦の首がひくひくと仰け反った。
「あ、やだ、ダメ、あっ、あ」
「ダメじゃないだろ。……なあ、ハマーに見られながらイッたんだ?」
「ひっ、う、ぅう、っ……」
耳元に押し付けられた唇からピヨ彦は逃げることができない。明らかに悪意の混じった言い方が快感に変わって耳から下半身へじりじりと伝っていった。その快感を捏ねるようにジャガーが腰を揺らし始める。
「上、服着たままでよかったな〜オレたち。いや、素っ裸でヤッてバラしちゃった方がよかったかなあ、お、ピヨ彦ん中ヒクヒクしてる。そういうの好き?」
「好、き、じゃな、っい……あっ、あっ♡」
「オレは考えたことあるよ、人いっぱいいるところでピヨ彦押し倒してエッチすんの」
考えたくもないことが強制的にピヨ彦の脳裏に映し出される。知ってる人、知らない人、関係なく衆人環視で、嫌だ、嫌なのに、下腹がゾクゾクしてジャガーを食い締める。止まない抽送がぞりぞりと肉壁を抉った。
「もちろんやんないけどさ……あ、でも明日さあ、教室で、みんな帰った後ヤろうか、教卓のとこでさ」
「やだ、ぁ、、やっ、あっ♡ イク、はぁ、ぁまたイクっ♡」
「あ〜……、想像した? ピヨ彦の中ぎゅうぎゅう締まる……オレもイキそ」
速度を増して、前立腺と精嚢をジャガーの先端がずりずりと擦る。ピヨ彦の陰茎の先端をジャガーの大きな手が包む。尿道を親指で撫でられると、薄くなった精液がびゅるびゅるとジャガーの手を濡らした。
「あっ、ぁ、ぁ、〜〜〜!♡」
身体を強張らせるピヨ彦に構わず、ジャガーはピヨ彦の中に陰茎を深く押し込んだ。尻のあわいに腰を押し付ける。一番奥で、ゴムの被膜の中に精液を出し切った。
ピヨ彦の首筋にいくつかキスを落としながら陰茎を抜き取る。ゴムの口を結んだ後、ジャガーは机の上のティッシュに手を伸ばした。手とピヨ彦の下腹を拭う。あとシーツにもティッシュを被せてトントン叩いた。
「明日はピヨ彦の分のゴムも持っとくか」
「え、本当にすんの」
「やるよ」
「…………」
「ケツの準備しといて。エッチな校則違反で身体検査みたいな感じでやろう」
「変態」
「ピヨ彦だってそうだろ」
ティッシュやゴムをまとめてゴミ箱に投げ入れた後、「ピヨ彦のやりたいことも教えてくれよ」とジャガーが言った。今はとりあえず天井板を接着剤で埋めたいとピヨ彦は思った。